ずーサン WP
04:隣の席の女の子はeスポーツに夢中
更新日:2022年8月12日

~とある学校の朝の教室~
(ふぁぁぁ…眠ぃ~)
二度寝すれば良かったかな~...なんて今更後悔。
眠いとか言いながらクラスで3番目くらいに教室に着いてるんだからなぁ。
特に目的も無いのに。
昨日が日曜だった事もあっていつものように"いろは"と一緒にオンラインでゲームしてたわけなんだけど、アイツが寝た後も1人で夜更かししてしまった。
※因みにアイツは次の日が学校の時は絶対に22時までにゲームを終えるんだよな。偉いわ…
夜更かししたくせに何故か目覚ましより早く起きちゃって、二度寝しようか迷ったけどせっかく起きたんだからそのまま起きるかーって事でいつもより早い登校になった。
早起きすれば得した気分になるって聞いたんだけど、そんな事ないな...
いろははまだ来てない。
4月に入って2週目。
進級してからのガイダンスやらクラス内での自己紹介やらも一通り完了して、落ち着いてきた感じ。
思い返せば高校1年生ってのはなんかこう、気が付いたら過ぎてたって感じがする。
「振り返ってみると短い」的な言い回しは随分昔からあるけど、まさにそんな感じ。
高校生になりたての頃は、期待と不安はもちろん、なんだかちょっと大人になった感じがあってワクワクしてたなー。
女子なんかは特に「女子高生」ってブランドを手に入れる訳なんだから、男子以上だろうなー。
まぁ女子の気持ちなんてよくわからないけど(付き合ったこともないし…)、蓋を開けてみれば高校生活なんて中学生活とたいして差が無いって思った。
ちょっと学校の規模が大きくなって生徒の数が増えただけって感じ。
中学に比べれば部活(特に運動部)のレベルはきっと上がるだろうし、クラス外での貴重な活動である部活に青春を捧げている奴らは「おっしゃぁぁ!高校生活めいいっぱいやってやるぜぇぇ!!」ってノリなのかもしれない。
帰宅部のオレには関係ないんよなー。
別に高校生活に不満がある訳じゃない。
友達だって人並みにいるし、フツーに皆とワイワイ仲良くやってるのは悪くない。
「昨日のSPY-FAMILY見た?」なんて話をするのも楽しい。
だってアーニャ可愛すぎじゃん。娘に欲しいしなんだったら妹にも欲しい。
奥さんとしても…いやいや、残念ながらそっちの趣味はオレには無い。そこはヨルさんで万事オッケー。
奥さん...恋愛ねぇ...
「あ、おはようミツル君!早いね~!」
朝のホームルームが始まるのを待つ間。
斜に構えてもの思いにふけっていた所に、元気な挨拶の声がかかる。
その声のトーンには感心しているようなニュアンスが含まていた。
外から見てもわからない程度にビクッとしたオレは、席に座ったまま顔を上げて挨拶の主の目を見て声をかける。
「お…おはようさんデス」
元気に返すのもなんだか照れくさいし、かと言ってシンプルに"おはよう"だけで返すのも味気ないなと思ったオレは、最終的によくわからない語尾をつけた挨拶で返した。
て言うか"おはよう"とか"こんにちは"を単体で言うのってちょっと恥ずかしい所ない?
これオレだけ??
ちなみに「目を見て」なんてカッコつけて言ってはいるけど、目を見れたのはほんの一瞬。
時間にすれば0コンマ1秒くらい。
コナン君くらいの洞察力が無いと見逃しちゃうね!
そんなオレの心の中の葛藤なんて知る由もないその小柄な女子は、オレのゴミのような挨拶に対して「うん!」と笑顔を返すと、自席であるオレの左隣に座った。
...ふぅ。
カバンの中からガサゴソと筆記用具やら何やらを取り出しては机にしまっている彼女越しに、オレは窓の外を見る。
オレたちの席は教壇から見て一番右奥。窓際。
いわゆる主人公席ってやつ。
彼女が窓側。
漫画やらアニメやらで主人公を教室の真ん中にでも座らせてしまうと、主人公を描く度に背景として周囲の生徒も描かなくちゃいけなくて大変だって理由で、作者はその必要を省略出来る窓際に主人公を置きたがる。
からかい上手の高木さんと西片だってそこに座っている。
(まぁ途中席替えがあって、2人は廊下側の一番後ろの席に移動するけど)
窓の外を見て、ちょっとだけ鼓動が早くなった心臓を落ち着けると、オレに見られてると思ってビクッとしたいろはが口を開く。
「ぇと…あ、SPY-FAMILYの最新話見た?アーニャすっごく可愛かったよね!」
ココ最近では天気の話をするかの如くSPY-FAMILYの話をするものなの?
「天気が良いですね」と「アーニャ可愛かったですね」は同ポジなの?
「まぁそうだな…可愛かった」
......可愛かった?
反射的に返答したものの、可愛いってワードを口にした瞬間異様な照れくささを感じる。
末尾に「アーニャが」と付け加えた方が良いのでは!?って頭を過った。
逆に違和感だけが残るような気がしたからその言葉は飲み込んだけど…
お、お前の事を可愛いって言ったわけじゃないぞ!アーニャの話だからな!
「オレは今日はたまたま早かったけど…いろははいつも通り早いな」
「うん!いっぱい寝ないとダメなんだよね~」
そう言ったいろはは一瞬視線を落として貧…スリムな胸部を気にしていたような気がしたけど、それはきっと気の所為だよな。
むしろオレが気にしちゃってるのかな。
なんかゴメンないろは。
さて余計な雑念が入った気もするけど、なんだかんだ普通に会話出来てる。
1年前には想像出来なかった光景。
新しいクラスになって僅か2週間にも関わらずこうして普通に会話出来てるのは、1年の時からクラスが同じだから。
そうでもなければこんなに馴れ馴れしく話せる自信はない。
オレもそうだけど、何よりいろはがねぇ...
ゲームがなければ、こうはなってなかったかもなぁ…
気が付くと時計はホームルームが始まる朝の8時半を指していて、担任の先生が教室に入ってきた。
「出席取るぞー」
クラス名簿のいわゆる出席番号はあいうえお順で並んでいる。
「秋本~」
1人目が呼ばれるとオレの隣に座る"秋本"が「はい」と返事をする。
聞こえない程ではないけど、教壇の先生の所にギリギリ届くくらいのボリュームで。
最初にオレに声かけた時の「おはよう」の方が声大きかったんじゃね?
とは言えいつもの事だから、先生も一切気にする事なくそのまま出席確認は続く。
「春野~」
「はい」
オレは自分の名前が呼ばれた所で、適切な間、適切なボリュームで綺麗に返事をする。
悪目立ちする事のない、完璧な返事だ。
ふぅっと鼻だけで小さくため息をついて、オレは筆箱を取り出した。
そういやいろはのヤツ、先月くらいからバイト始めてからなんかイキイキしてる気がするな。
新しく始めたバイト、面白いのかな。
***
続
あとがき
どうもずーサンです!ちゃす!
さて今回新たな人物が登場しました。
いろはのゲーム仲間でクラスメイトで隣の席の男子「ミツル」君です。
いろはの学校生活については、基本的にはミツル視点で描いていく予定です。
第三者から見た時のいろはがどんな風に映るのか。
楽しんでいただけますと幸いです!
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