ずーサン WP
05:隣の席の女子がeスポーツのバイト始めたらしい
更新日:2022年8月30日

~帰りのホームルーム後の教室~
「いろは~。そういや先月から新しくバイト始めたって言ってたよな?確かeスポーツのバイトしてんだっけ?」
本日の授業の全行程を終えて、カバンに教科書をしまいながらオレは隣の席で同じく教科書をしまういろはに尋ねる。
部活がある連中は帰りのホームルームが終わってからの身支度が早い。
帰宅部の連中はわりかしのんびりしていて、教室に残っている生徒の数は10人くらいって所か。
「そうなんだ~♫あれ、私ちゃんと話してなかったっけ?」
うっしっしって具合にちょっと自慢げに笑いながら答えるいろは。
その表情にオレはちょっとドキッとする。
「なんかゲーム系のバイトする事になった~ってトコまでは認識してる。合格した日の夜にゲームしながら話してたけど…後はいろは早口過ぎて何言ってるか分からんかったw」
そうなんだよ。
いろははテンション上がると早口過ぎてマシンガンになるんよ…
基本的にはゲーム関連の話をしてる時になりがちなんだけど、バイト受かったのがよっぽど嬉しかったんだろうなぁ。
「あれ…そうだっけ?それはそれは失礼しましたw」
あはは…と苦笑いするいろは。
まぁいつもリアクション大きいから、喜怒哀楽が分かりやすくて良いと思います。
何考えてるかわからないヤツが一番厄介だからな。
それを読み解けるほどの洞察力はオレには無いし。
「で、どんなバイトしてるんだって?」
オレは仕切り直して話題を戻す。
「えっとね。ウェルプレイド・ライゼストっていうeスポーツ専門会社があって。その会社がやってる"ウェルプレイドリーグ"っていう大会があるんだけど、そこのアルバイトをする事になったんだ!」
「へぇ~、eスポーツかぁ。まぁ確かにゲーム関連だし楽しそうな感じはするかも。って言っても"eスポーツ専門会社"のバイトが何やるのか全然わからんけど。」
eスポーツ自体は当然オレも認識してる。
それこそFPSタイトルはちょくちょく遊ぶし、そのプロがいるのも知ってるし、配信者の動画だってよく見る。
でもそーゆー世界があるってのを知ってるだけで、実際にその裏側がどうなってるのかは全然わからん。
「eスポーツって言っても色んな仕事があるみたいだけど、私も詳しいところはあんまり分かってないんだ。ただ、そのウェルプレイドリーグは大会なんだけど大会っぽくないっていうか…なんかプレイヤーとの距離が近くて素敵だなーって思って興味あったんだ~!」
そう話すいろはは楽しそうだ。
人に対してはコミュ障だしモジモジしてるくせに、変な所で行動力あるよな。
中身あんまり分かってないのに飛び込んでいったのかよ。
「でも"バイトあるから先帰る!"みたいな事無いけど、そこまで忙しくない感じ?」
「平日にやる事はあんまりないかな。事務所が都内だからココからだとちょっと遠いし…やるとしても自宅で出来る作業が多いね。メインは土日に大会やる時!」
「大会やる時にいろはは何やるの?」
「まだバイト始めたばっかりだからちゃんと全部は分かってないんだけど…大会やる時には配信も一緒にやる事が多いから、その時の現場のお手伝いって感じかな!前に現場に見学だけで行った時は、テレビ放送の裏側っぽい感じだった!」
なんだかちょっとだけいろはが大人に見えた。
"すげーなー"
それがオレの最初に思った月並みな感想だった。
自分の身の周りの人間がやってる"バイト"と言えば基本的には飲食店が多い。
でもいろはのバイトは、バイトなんだけどフツーに社会人の仕事って感じがした。
"事務所"とかちょっとカッコいいし…
すぐ隣にいる人間がそうやって大人の階段を登っているのを目の当たりにすると、どうしても自分のちっぽけさを痛感する。
オレは何やってるんだろって気持ちになってくる。
それと…
オレが知らない世界でのいろはってどんな感じなんだろうか。
「eスポーツの会社ってなると、やっぱり男女比率って男の方が多いの?」
「そうだねー。多分男の人の方が多いっぽい!でも私も社員さん皆と交流があるわけじゃないから、会社全体としてどうなのかはわからないなぁ。」
なんかeスポーツの会社っていうとイケイケ人がいそうなイメージがある。
ちょっと前まではゲームってそこまで陽キャなイメージはなかったけど、最近だと芸能人もガンガンやってるし、プロ選手はカッコいいし、サイバー感って言うか最先端な感じがある。
そんな人達の中でいろはって上手くやっていけてるのか?
「いろはってスゲー人見知りじゃん?そんな新しい環境にいきなり飛び込んで、ちゃんとコミュニケーション取れてんの?」
ちょっと小馬鹿にしたように、ニヤニヤしながら聞いてみた。
…照れ隠しなんだけどさ。
「う~ん、まだ全然打ち解けてるってほどじゃないと思うけど…みんな優しいし、面白い人ばっかりだし、やっぱりゲーム好きな人達だからなんとかなりそう!」
なんだか嬉しいような悔しいような…
そりゃあいろはに居場所が出来ていくのは嬉しいんだけど、オレ以外にも心を開いているのはなんか悔しい気がする!
気がする!!
「その人達は結構顔出ししてるから…ほら!写真もあるよ!」
そう言うといろははスマホの写真フォルダから1枚の写真をタップして、オレに見せてきた。
確かに写ってるのは全員男だ…
髪の毛のボリュームがアリすぎて目がほとんど見えてない人。
金髪に丸メガネのちょっとチャラチャラしてる人。
あとは癖っ毛(パーマ?)にヒゲの渋めの人。
「ちなみにこの人が"ずーサン"って言って、この大会の責任者をしてる人!」
いろははそう言いながら、さっきのヒゲの人を指さした。
…なんだか大人の色気的なオーラを放ってる。
説明するいろはの表情も心なしか明るい気がする。
「ふ~ん。ま、まぁ早く仲良くなれると良いな。」
そう言いながらスマホをいろはに返す。
この話はこれくらいで切り上げておこう。
オレもあんまわからない話だし。
戻されたスマホを見たいろはが「もうこんな時間だ!」とカバンを手に取り、教室の出口に向かう。
「最近少しずつパソコンのタイピング練習してるんだ~!今日も帰ってちょっと練習しないと!」
なんだか自分が置いていかれているような気持ちになってモヤモヤする。
でもいろはが前を向いて頑張っている事は応援したい。
自分でもキモいなーってちょっと自己嫌悪。
「ほらミツル君帰るよー!」
そう言ういろはの表情は今日一番明るい気がして。
何か希望に満ち溢れたようなその笑顔を見たら心のモヤが少し晴れた。
…ズルいよなー。
「何が帰るよだ。駅まで一緒なだけだろ。」
たいして意地悪になってない自分なりの意地悪な物言いをして、オレは教室を後にした。
***
続
【あとがき】
どうもずーサンです!ちゃす!
さてさて。
物書きでもなんでも無いのに小説を書いている、訳の分からないeスポーツプロデューサーですw
この第5話までがプロローグ編となります。
「いろはという女子高生がいて、これからeスポーツ業界で頑張っていくぞー!」ってお話です。
ここから先については有料のファンクラブ内で更新していこうかなと考えています。
ファンクラブについては鋭意準備中です。
※企業なのでマネタイズしないといけない
※生まれた利益でもっと大きなコンテンツにしていきたい
ボクは物書きではないので"小説"としての価値はそこまで高く出せないかもですが、アニメにおける原画のような、いろはの"メイキング資料"として価値を持たせたいと思います。
この業界の事を発信したり、ゲームに新しい価値を付加出来るように、彼女と一緒に頑張っていきたいと思います。 ファンクラブが開設した際には、是非応援いただけますと幸いですm(_ _)m
ずーサンより
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